【地域包括診療】6つの見直しを徹底解説
認知症統合・対象患者拡大・外来データ提出加算新設等
認知症地域包括診療加算・料を統合し評価体系を簡素化。対象患者に要介護被保険者等を追加。連携薬局の24時間要件を一部緩和。外来データ提出加算(10点)を新設。薬剤適正使用連携加算の対象を外来通院患者にも拡大。医療資源の少ない地域の医師配置要件を緩和。
令和8年度診療報酬改定において、地域包括診療加算・地域包括診療料等の見直しが行われます。
今回の改定では、対象疾患を有する要介護高齢者等への継続的かつ全人的な医療を推進する観点や、適切な服薬管理の実施を推進する観点から、対象患者の拡大、認知症地域包括診療加算・料の統合による評価体系の簡素化、連携薬局の24時間要件の一部緩和、外来データ提出加算(月1回10点)の新設、薬剤適正使用連携加算の対象拡大、医療資源の少ない地域における医師配置要件の緩和の6点が改定されます。
本記事では、改定の背景、具体的な変更内容、シミュレーション、実務対応まで解説します。
1. 地域包括診療加算等の概要
地域包括診療加算は、かかりつけ医機能を持った診療所の医師が、複数の慢性疾患を有する患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行うことを評価する加算です。
地域包括診療料は、同様の趣旨で許可病床数200床未満の病院又は診療所において、月1回算定できる包括的な診療料です。
【地域包括診療加算の基本情報(現行)】
【地域包括診療料の基本情報(現行)】
2. 改定の背景:かかりつけ医機能の評価見直し
令和8年度改定に向けた中医協の議論では、2025年4月から施行された「かかりつけ医機能報告制度」を踏まえ、かかりつけ医機能の評価のあり方が見直されました。
【中医協で議論された主な課題】
- 届出の伸び悩み:機能強化加算や地域包括診療料の届出数は横ばいであり、地域包括診療加算についても伸びが緩やかになっている
- 要支援・要介護高齢者への対応強化:要支援・要介護の高齢患者が増加に伴う、フレイル、認知症、低栄養への対応、誤嚥性肺炎の予防など多岐にわたる対応の必要性
- 外来データ提出加算の推進:外来データ提出加算等の届出が低調のため、届出の促進
- 評価体系の簡素化:認知症地域包括診療加算・料が地域包括診療加算・料とは別建てで設定されており、制度の簡素化が望まれる
- 薬剤適正使用の推進:他の医療機関から処方されている薬剤を含めた適切な服薬管理の実施を推進
これらの議論を踏まえ、今回の改定では「かかりつけ医機能の評価」を強化する観点から、6点の見直しが行われました。
3. 変更点①:対象患者の拡大と認知症地域包括診療加算・料の統合
今回の改定の最大の変更点は、対象患者の拡大と認知症地域包括診療加算・料の統合です。
対象患者の拡大
従来の「6疾病のうち2つ以上」という要件に加え、新たに以下の患者が対象に追加されます。
【新たに追加される対象患者】
脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全又は慢性腎臓病のいずれかの疾患を有しており、かつ、介護給付又は予防給付を受けている要介護被保険者等である患者
従来は認知症を含む6疾病のうち2疾病以上が必要でしたが、改定後は認知症以外の5疾患のうち1つ+要介護・要支援認定の組み合わせでも算定可能となります。
認知症地域包括診療加算・料の統合
簡素化の観点から、認知症地域包括診療加算及び認知症地域包括診療料が、地域包括診療加算及び地域包括診療料に統合されます。統合後は、患者区分に応じた点数体系となります。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 地域包括診療加算1 (慢性疾患等の患者) | 28点 | 28点(変更なし) |
| 地域包括診療加算1 (認知症を有する患者等) | 認知症地域包括診療加算1 38点(別建て) | 38点(変更なし) |
| 地域包括診療加算2 (慢性疾患等の患者) | 21点 | 21点(変更なし) |
| 地域包括診療加算2 (認知症を有する患者等) | 認知症地域包括診療加算2 31点(別建て) | 31点(変更なし) |
【「認知症を有する患者等」の定義】
改定後の「認知症を有する患者等」とは、以下のすべてを満たす患者をいいます。
- 認知症を有する者、又は介護給付若しくは予防給付を受けている要介護被保険者等である者
- 認知症以外の1以上の疾病(疑いを除く)を有する者
- 同月に、1処方につき5種類を超える内服薬の投薬、及び1処方につき抗うつ薬・抗精神病薬・抗不安薬・睡眠薬を合わせて3種類を超える投薬のいずれも受けていない者
地域包括診療料についても同様に統合され、認知症を有する患者等の場合とその他の患者の場合で点数が区分されます。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 地域包括診療料1 (慢性疾患等の患者) | 1,660点 | 1,661点 |
| 地域包括診療料1 (認知症を有する患者等) | 認知症地域包括診療料1 1,681点(別建て) | 1,682点 |
| 地域包括診療料2 (慢性疾患等の患者) | 1,600点 | 1,601点 |
| 地域包括診療料2 (認知症を有する患者等) | 認知症地域包括診療料2 1,613点(別建て) | 1,614点 |
4. 変更点②:連携薬局の24時間対応要件の緩和
地域包括診療加算及び地域包括診療料を算定する保険医療機関の連携薬局について、24時間対応要件が一部緩和されます。
【緩和の内容】
緊急時に処方が必要となる解熱鎮痛剤等の薬剤の院内処方が可能な体制が整備されている保険医療機関に限り、連携薬局について24時間対応の体制が整備されていなくてもよいものとする。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 診療所の連携薬局要件 | 24時間対応できる体制を整えている薬局と連携していること | 緊急時に処方が必要となる解熱鎮痛剤等の院内処方が可能な体制が整備されている場合は、連携薬局の24時間対応体制整備は不要 |
| 病院の連携薬局要件(地域包括診療料) | 24時間開局している薬局であること | 緊急時に処方が必要となる解熱鎮痛剤等の院内処方が可能な体制が整備されている場合は、24時間開局は不要 |
地域によっては24時間対応の薬局の確保が困難なケースがあり、この緩和により地域包括診療加算等の届出を行える医療機関の範囲が拡大されることが期待されます。
5. 変更点③:認知症患者の診断後支援に係る取組の明記
地域包括診療加算及び地域包括診療料について、担当医が認知症患者の診断後支援に関する取組を案内することが望ましい旨が明記されます。
【明記される内容】
診療を担当する医師は、地域包括支援センター、認知症地域支援推進員又は若年性認知症支援コーディネーターと連携し、ピアサポート活動、本人ミーティング又は一体的支援事業等の認知症患者の診断後支援に係る取組について、必要に応じて、認知症患者又はその家族に対して案内を行うことが望ましい。
「望ましい」との位置づけであり必須要件ではありませんが、新たな算定要件が追加されています。
6. 変更点④:薬剤適正使用連携加算の対象拡大
地域包括診療加算及び地域包括診療料を算定し、他の保険医療機関にも併せて通院する患者について、薬剤適正使用連携加算の算定対象が拡大されます。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 対象場面 | 他院に入院又は介護老人保健施設に入所していた患者のみ | 他院の外来で継続的に診療を受けている患者を追加 |
| 算定頻度 | 退院日又は退所日の属する月から起算して2月目までに1回 | 3月に1回 |
| 点数 | 30点 | 30点(変更なし) |
改定後は、処方内容・薬歴等に基づく相談・提案を他の医療機関に行い、当該患者が使用する薬剤の種類数が減少した場合にも算定可能となります。かかりつけ医が外来通院中の患者に対しても積極的に服薬適正化に関与することが評価されます。
7. 変更点⑤:外来データ提出加算の新設(月1回10点)
地域包括診療加算及び地域包括診療料について、診療データを継続して厚生労働省に提出している場合の評価が新設されました。
【外来データ提出加算】
外来データ提出加算は地域包括診療加算・地域包括診療料の双方に適用されます。体制の整備が必要ですが、算定することで月1回10点の安定的な収入増が見込めます。
8. 変更点⑥:医療資源の少ない地域の医師配置要件緩和
医療資源の少ない地域において、慢性疾患を有する患者に対する継続的かつ全人的な医療に係る評価を更に推進する観点から、医師配置に関する要件が緩和されます。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 施設基準の医師配置要件 (時間外対応加算の届出がない場合) | 常勤換算2名以上の医師が配置されており、うち1名以上が常勤の医師であること | 医療資源の少ない地域にあっては常勤換算1.4人以上 |
「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げる地域に所在する診療所が対象となります。地域包括診療料についても同様の緩和が適用されます。
9. 点数比較シミュレーション(現行 vs 改定後)
今回の改定による収入影響を、代表的なケースでシミュレーションします。
ケース1:地域包括診療加算(認知症患者・加算1)
認知症+高血圧の患者が月2回再診する場合(年間)
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 加算名 | 認知症地域包括診療加算1 | 地域包括診療加算1 (認知症を有する患者等) |
| 1回あたり点数 | 38点 | 38点 |
| 外来データ提出加算 | (なし) | +10点/月 |
| 年間加算点数 (月2回再診×12月) | 38点×24回=912点 | 38点×24回+10点×12月=1,032点 |
年間 +120点(+1,200円)/患者1人あたり
※外来データ提出加算の届出を行った場合
10. 改定内容の全体比較(現行 vs 改定後)
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 認知症地域包括診療加算・料 | 別建て(加算38/31点、料1,681/1,613点) | 地域包括診療加算・料に統合 |
| 対象患者 | 6疾病のうち2つ以上 | +認知症以外の疾患1つ+要介護被保険者等 |
| 加算1点数 | 28点 | 認知症等38点/その他28点 |
| 加算2点数 | 21点 | 認知症等31点/その他21点 |
| 診療料1点数 | 1,660点 | 認知症等1,682点/その他1,661点 |
| 診療料2点数 | 1,600点 | 認知症等1,614点/その他1,601点 |
| 連携薬局24時間要件 | 原則24時間対応必須 | 院内処方体制がある場合は不要 |
| 認知症診断後支援 | (規定なし) | 案内が望ましい旨を明記 |
| 薬剤適正使用連携加算 | 入院・入所患者のみ(退院後2月までに1回) | 外来通院患者も追加(3月に1回) |
| 外来データ提出加算 | (規定なし) | 新設 10点(月1回) |
| 医師配置要件(医療資源の少ない地域) | 常勤換算2名以上 | 常勤換算1.4人以上 |
11. 医療機関が対応すべき実務チェックリスト
1届出の見直し・統合対応
認知症地域包括診療加算・料を算定していた医療機関は、統合後の届出要件・運用に変更がないか確認する。
2対象患者の洗い出し
対象患者の変更に伴い、対象となる患者の有無を確認する。
3連携薬局体制の再検討
24時間対応薬局の確保が困難であった場合、院内処方体制の整備により連携薬局要件を満たせるか検討する。
4外来データ提出加算の届出検討
診療データを継続的に厚生労働省に提出する体制を整備し、外来データ提出加算(月1回10点)の届出を検討する。
5認知症診断後支援の案内フロー構築
地域包括支援センター、認知症地域支援推進員等の案内フローを構築する。
6薬剤適正使用連携加算の算定機会拡大
他院に通院中の患者について、薬剤適正使用連携加算の対象となるか確認する。
12. まとめ
【改定のポイント一覧】
- 認知症地域包括診療加算・料を統合:評価体系を簡素化。地域包括診療加算・料に一本化し、患者区分(認知症等/その他)で点数を設定
- 対象患者を拡大:慢性疾患1つ+要介護被保険者等の組み合わせでも算定可能に
- 連携薬局の24時間要件を緩和:院内処方体制がある場合は連携薬局の24時間対応が不要に
- 認知症診断後支援の明記:地域包括支援センター等と連携した診断後支援の案内が望ましい旨を明記
- 薬剤適正使用連携加算の対象拡大:他院の外来に通院する患者も対象に。算定頻度は3月に1回
- 外来データ提出加算を新設:月1回10点。データ提出体制の整備が必要
- 医療資源の少ない地域の要件緩和:常勤換算2名以上→1.4人以上に
今回の地域包括診療加算等の見直しは、かかりつけ医機能の評価を拡充しつつ、評価体系の簡素化と算定可能範囲の拡大を図るものです。特に、対象患者の拡大と連携薬局要件の緩和により、これまで算定できなかった医療機関や患者にも算定機会が広がります。
統合に伴う届出の見直しや対象患者の洗い出しなど、施行日までに準備すべき事項は多岐にわたります。早めに詳細を確認のうえ、体制を整備することが重要です。
地域包括診療加算等の改定対応は、
管理体制の見直しから
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